若いスタイリストの道を作る
若いスタイリストの道を作る - 美容師という仕事の素晴らしさや魅力を、現役で活躍する美容師にインタビューをして伝える本企画の第三弾は、表参道に2店舗出店している人気美容院のdepart(デパール)の代表を務める、今野純也さんにお話を伺うことができました。
今野さんはスタイリストになってから、大きなハードルに気付いてそれを乗り越えて今があると仰っていました。美容師になったきっかけからdepartを開業するまでの秘話、そして次の目標を惜しみなく教えてくださいました!
美容師になるきっかけ
-今野さんが美容師の道に進もうと思ったきっかけはありますか?
高校二年生のときに、次の進路をどうするか考えることがあったんです。 そのときに仲の良かった先輩から、美容師って結構いいよと聞いて考えるようになりました。 あと単純に美容師って仕事がかっこいいな、とも思ったんですよね。 もともと洋服も好きだったし、オシャレすることも好きだったので。
-それで美容専門学校へ進んで、美容院へ就職したという流れですね。やはり原宿や表参道の美容院へ就職をしたんですか?
いえ。最初は文京区で複数店舗出店している、地域密着型の美容院へ就職をしました。 当時は美容院の情報ってあんまりなかったし、専門学校の先生が紹介してくれた美容院にそのまま就職することにしたんです。
アシスタント時代のこと
-今野さんはやっぱりアシスタント時代から優秀だったんですか?
優秀、ではなかったと思います。
ですが、自分よりもイケてないと思った同期よりも、下手なことが嫌で練習は頑張ってやってました。 あとその店舗ではちょっと浮いた存在だったかもしれません。
その美容院では洋服を白シャツに黒パンツと決まっていて、スニーカーとか履いたらダメだったんです。 美容師ってかっこいいしオシャレって思ってたのに、その美容院ではオシャレをしたくてもできない環境だったんです。 けど、オーナーが来ないときなどはスニーカーをコッソリと履いたりしていたんですが。(笑)
-思っていた美容師像と違っていたんですね。
そうなんです。 私がその美容院に就職をしてちょっとしたら、カリスマ美容師ブームが始まったんです。 どのファッション誌を見てもヘア企画があった時代なんですが、そこに掲載されているのって原宿や表参道の美容院ばかりだったんです。 そのときに『根本的に間違えてた!』って思いました。(笑) そこで当時勤めていた美容院は退職し、原宿・表参道の美容院で働こうと思ったんです。
-すぐに次の美容院は決まりましたか?
面接自体は3店舗目で合格しました。 しかし自分に自信があったので、2店舗も落ちてしまうことに挫折感を味わいました。 3店舗目に関してはタイミングがとてもラッキーで、面接したときにたまたま人が辞めてしまったらしく、来週からでも来れるかとその場で内定をもらったんです。
-青山の美容院と1店舗目の美容院とは違いはありましたか。
もう全てが違いました。 先輩たちが作るヘアスタイルの仕上げがとにかくかっこいいんです。 しかもお客さんは普通の一般の方だけではなく、芸能人の方もたくさん来るような美容院でした。 働きながら「これだよ、これ!」って思いながら、常に新鮮な気持ちで働くことができていましたね。
-違う環境になったと思いますが、何か苦労したことなどはありましたか?
アシスタントの頃は、苦労と思ったことはあまりなかったですね。 というのも、私が入社したくらいのタイミングで、トップアシスタントの2人がすぐにスタイリストになったんです。
その下のアシスタントはというと、私と入社時期があまり変わらない人たちばかりだったんです。 トップアシスタントの座はそのまま空席になったので、その座を掴むためにガムシャラに頑張っていました。 その結果トップアシスタントになることができ、入社して1年半くらいでスタイリストにもなることができたんです。
お客様との向き合い方
-では順風満帆の美容師生活だったんですね!
そんなことはありませんでした。 スタイリストになってからすぐに壁にぶつかったんです。 それは新規のお客さんが付かない、ということです。
スタイリストになったら自分のお客さんがドンドンとできて、たくさん売り上げを出せるんだと思っていたし、実際に先輩はそうなっていたんです。 ですが、私がスタイリストになった頃は、もうカリスマ美容師ブームも落ち着いてきていて、ファッション誌にも限られた美容院しか掲載されないようになっていました。 私が勤めていた美容院は、その頃にはファッション誌への掲載数もガクッと減っていて、新規のお客様が全然来なくなっていたんです。
-ではどのようにして新規のお客様を獲得していったんですか?
もうガムシャラにモデルハントやモデル撮影をしていました。 そのモデルさんから友だちを紹介してもらって、またモデル撮影をしてという繰り返しです。 そんなときに40代の女性向けファッション誌が創刊するタイミングで、私が勤めていた美容院が4ページくらいで紹介されたんです。
そうしたら新規のお客様がたくさん来てくれるようになったんですが、20代中盤くらいの美容師が40代のお客様を担当するって結構ハードルが高いことなんですよ。 私は強気な性格なので「新規のお客様は私がやります」と手をあげました。 先輩は自分の顧客で手一杯だったこともあり、その結果新規のお客様は全部私に来るようになったんです。
-そのときのお客様が顧客に繋がったんですか?
実は「3回目も来店してもらう」というハードルがなかなか乗り越えることができなかったんです。 当時はグラデーションからレイヤーに流行が移るくらいの時代で、重いヘアスタイルをレイヤースタイルにすることで大きな変化がありとても喜んでもらえたんです。 その結果2回目までは再来してもらえたんですが、3回目も来店してもらう実力が私にはありませんでした。
「お客様は3回目までは様子見。だけど自分たちは再来してくれてるんだから、もう自分の顧客だと思い込んでる。そのギャップが失客に繋がっている」
これは当時のオーナーの言葉なんですが、その意味が本当にわかるのはもうちょっと後のことでした。
-どのようにしてそのハードルを乗り越えたんですか?
当時の私は、自分の提案をお客様に押し付けていたんです。 しかし、お客様の意見をしっかりと聞いて、その上で自分の提案を乗せるようにしたんです。 お客様に向き合ったことで、ドンドンとお客様が本当に顧客になってくれました。
このように考えられるようになったきっかけがあります。 私がスタイリストになって3ヶ月くらいで、千葉県の柏に新しい店舗を出店することになり、その責任者に私がなることになったんです。 そのときの私のスタイルは、モデルハントをガンガンやって、モデル撮影も紹介も自分自身でストイックなってやっていくというものでした。 これくらいのストイックさを柏のスタッフに求めたんです。
それを求めた結果は、スタッフが全然定着しないというものでした。 私はガンガンと前に突き進んでいましたが、周りのスタッフはそこまでのモチベーションはなかったんです。 ふと後ろを振り向いてみたら、誰も私に着いて来てくれてなかったんです。
それまでの私は自分単位で考えていましたが、そのときにお店単位で考えるようにしてみました。 そうするとスタッフとの関わり方はもちろんですが、お客様との関わり方にも変化があったんです。 それがさっきお伝えした、お客様の意見をしっかりと聞くというものです。 自分が変わったことで、スタッフも安定したしお客様も定着してくれるようになりました。
-ハードルを乗り越えたことで、新規も既存も上手く循環するようになったんですね。
新規のお客様があまり来ないという問題は解決はしていませんでした。 その結果20代後半から30代前半のスタイリストが、お店を次々と辞めていってしまったんです。 私もその頃はすでに結婚して子どもできていたので、この先のことを改めて考え始めるようになりました。
違う業種に転職するか、それとも美容院を変えるか。 色々と考えていましたが、ちょうどその頃に面貸しの美容院が増えてきたこともあって、独立を目的にしてフリーランスとして働こうと決断をしました。 3年間フリーランスとして独立資金を貯めて、departを立ち上げることになったんです。
departに込めた想い
-departはどういう想いを込めて立ち上げたんですか?
新規のお客様がたくさん来店してくれる店舗にしようと考えました。 私だけが売り上げを出すだけで考えたら、新規客をそこまで集客しなくても大丈夫なのですが、私よりも下の子たちが困らないために新規客にたくさん来店してもらいと考えたんです。 たくさんの新規客が来店してくれたら、その分スタッフも多く雇うことができる。 そして人が増えることで週休2日などの労働環境を変えていくことができると考えています。
そういうことを考えてdepartをオープンさせましたが、初月から200〜300名の新規客が来店してくださったんです。 そのまま順調に新規客も増えてきて、1年で2店舗展開することもできました。
-凄い成長ですね! こうなることは想定していましたか?
オープン当初は、以前働いていた美容院の仲間3人でオープンしたんですが、こんなことになるなんて思いもしていませんでした。 しかし新規客が順調に増え、それに伴いスタッフがたくさん入ってきてくれたんです。 私はスタッフを守らないといけないし、将来を安心してもらえるようにしないといけないと考えています。
新規客がたくさん来店してくれる美容院作りは出来ていると思います。 なので次の目標は、今カット練習をしているスタッフのみんながスタイリストになったときに活躍できる店舗を作ることです。
departという店舗の由来は、フランス語で『出発』という意味です。 これは私がではなく、スタッフのみんなはもちろん、来店してくださったお客様全員にとっての出発になったらと願ってつけた名前です。 これからも、この名前の通り色々な出発地点になれるよう行動していきたいと思います。
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