たくさん失敗してたくさん成長した。
表参道駅のA5出口から5分ほど歩くと、CHIIさんが働く『ANTI』があります。CHIIさんはファッション誌やヘアカタログ誌の常連で、トレンドだけではなくその人に似合うヘアスタイルを提案し続けています。 感性豊かなCHIIさんのヘアスタイルは、どのようにして作られるのか。美容だけではなく、CHIIさんのパーソナルな部分も聞かせてもらうことでわかってきました。
人に喜んでもらうことが嬉しかった
-今回は美容師としてのCHIIさんのことだけではなく、パーソナルな部分も色々とお聞きできたらと思っております。まず、CHIIさんが美容師になりたいと思ったきっかけから教えてもらえますか?
え? そんな前のことからお話するんですか?(笑) そうですね、髪の毛をいじるのが楽しい! って思うようになったのは小学校低学年の頃だったと思います。 私には三姉妹の従姉妹がいるんですが、その子たちの髪の毛を編み込んだりしていたんです。
-そんな小さな頃からアレンジしてあげてたんですね!
そうなんです。編み込みが完成するととても喜んでもらえましたし、「また髪の毛いじってね」って言われるのがとても嬉しかったんですよね。
あと、私は当時横浜に住んでいたんですが、母が表参道の美容院に通っていて、それについていくことが多かったんです。美容院についていくと、母が髪の毛を切ってもらっている間、お小遣いをくれて本を買ってもらったり、美容師さんたちに遊んでもらったりしていて、美容院という空間が私にとって楽しい場所で、HAPPYの入り口になっていたんです。
-子どもの頃から美容院という空間に慣れ親しんでいたんですね。それにしてもお母さんは横浜から表参道まで通っていたんですね。
そうなんです。母は、ヘアスタイルやファッションへのこだわりが、強かった方だと思います。母を担当していた美容師さんは、もう現役を退いていらっしゃるんですが、私が本格的に美容師になりたいと思ったときに結構相談に乗ってもらったりしていたんです。
-その美容師さんとずっと親交があったんですね。CHIIさんが具体的に美容師になろうと思ったのはいつ頃なんですか?
それは高校一、二年生の頃ですね。 母から手に職をつけなさいと言われていて、考えた結果美容師への道に進もう思ったんです。
-周りのお友だちも美容師志望の方はいらっしゃいましたか?
それが全然いませんでした。(笑) 私が通っていた高校は比較的自由な校風で、私の周りには美大に行きたいと考えている子が多かったんです。その頃も私は人の髪の毛をいじるのが好きで、ヘアアレンジはもちろんハサミでカットとかもしていました。このときも子どもの頃と同じで、やっぱり友だちがとても喜んでくれたんです。それが私も本当に嬉しくて、喜んでくれる姿を見ることが私にとっての喜びなんだなって改めて気付きました。
美容学校を経て、ANTIへ入社
-高校を卒業したら、美容専門学校へ進むことになったんですよね?
はい、そうです。 当時の美容専門学校は一年制で、入学したと思ったらすぐに就職活動をしなくてはいけなかったんですが、必ず就職ということでもなく、専門科に進むことで二年目も学ぶことができるようになっていました。なので、すぐに就職ではなく、専門学校でもうちょっとちゃんと学んでから就職活動をしようと考えていました。
-ANTIにはどうして就職しようと思ったんですか?
専門学校時代の友だちがANTIへ就職したので、色々と教えてもらったんです。 実は専門学校にいるときは、ANTIのことを全然知らなかったんです。話を聞いているうちに興味が出てきて、それからANTIの勉強を始めてみました。ファッション誌を見ていたときに、ANTIのBOSSである小松のヘアスタイルが掲載されていて、そのスタイルがとてもステキだったんです。創るヘアスタイルのデザインはもちろんなんですが、モデルさんがとっても自然でHAPPYな表情をしてて、こんな世界観を作れる人ってすごいなと思いました。
-ANTIは、以前から本当に魅力的なヘアスタイルを提案している印象があります。
ありがとうございます。 ですが私がANTIに入社したいなと思ったのは、ヘアスタイルだけではなくとても人間味のある暖かな美容院だと感じたからなんです。
-どういうところでその部分を感じられたんでしょうか?
例えば朝礼です。朝礼をしている美容院は多いと思いますが、ANTIは決まった内容を報告するだけでなく、そのときに感じたことや発見などを発表する場だったりするんです。そういう細かい部分ですが、その人がどんなことを考えているのか、そしてそういうことを発見したその人のことを知ることができる。ただの朝礼ですが、一緒に働くその人のことをもっと知れる場だったりするんです。
-なるほど。確かに人間らしさを感じることができますね!
あと、小松が写真好きで、その作品を見たときにとてもステキだったんです。私も父の影響で高校生の頃から写真を撮っていたので、その写真を見てもらいたい。そしてこの人に自分の思いを聞いてもらいたい。って思ったんです。 そうしてANTIのことを知れば知るほど、ここで働きたいという思いが強くなっていきました。
ANTIで一番失敗して、その分成長をした
-アシスタントの頃からCHIIさんはバリバリと働かれていたんですか?
私って実は人見知りで、自分に自信が全然なかったんです。それが外に出てしまっていて、よく先輩たちから注意をうけていました。 その中でも特に自分でもぐうの音も出なかったのが、注意されているときに先輩の目を見ることができなくて「注意してるんだから人の目をしっかり見なさい」って言われたんです。(笑) こればかりは確かにって思っちゃいますよね。(笑)
-他に印象深い注意などありましたか?
小松が良く「人が気付かないことに、気付くことができることが大切」ということを言うんです。例えば掃除ひとつにしても、誰も気付いていない汚れなどを見つけて、それをキレイにすることができたりですね。 他にも、お客様の仕上がりをチェックしてもらう手鏡を以前は床に立てかけていたんですが、その手鏡を絶対に倒れないように丁寧に置けているかなどもそうです。
-確かにそういう細かなことが徹底されている美容院は、サービスが行き届いている印象があります。
そうなんですよね。これって単純に気付くだけじゃなくて、気遣いや気配りがしっかりできているのかということに繋がるんです。さらにこの気付きの部分は、掃除や整理整頓のことだけじゃなくて、ヘアスタイルのデザインにもつながる話にもなります。
ヘアスタイルを作るときって、いかにその人の魅力に気付けるかだと思うんです。もちろんトレンドや、その人がなりたいヘアスタイルなどもありますが、その人の魅力に気付いてあげて、さらにその希望を取り入れることが大切なんです。
STYLE INFOスタイル情報
切りっぱなしセミディパーマ
【CHIIさんからのコメント】
ラフリラックスな今風セミディパーマ☆ 大人カジュアルな雰囲気に♪
-なるほど! そういう技術とはまた違う、気付くということが重要になるんですね。
はい。アシスタントはまずにシャンプーから始める美容院が多いと思いますが、このシャンプーひとつにしても、雑にしてしまうとこれからの美容人生全てが雑になりますし、逆にここを丁寧にクリアすることで全てが上手くいくとも教えてもらいました。 小松は天才と思われることが多いですが、実はそういう細かなことの積み重ねで今のような美容師になることができたんだと、ANTIに入社して感じたことです。
-たくさんのことをアシスタントの頃に学んだんですね! スタイリストになってからはどうでしたか?
スタイリストになった時もたくさん失敗してましたね。笑 スタイリストに昇格したときに、「やっとお客様とお仕事ができるんだ! お客様が望むことはなんでも叶えてあげたい!」って浮かれちゃってたんです。
そんな気持ちでお客様と接していたら、何度かクレームを頂いてしまったんです。例えばブリーチと縮毛矯正をすでにされていて、髪の毛がダメージでボロボロになってしまっているお客様に対して、お客様が望んでいるからとオーダー通りにパーマやカラーなども含めた施術をしてしまったんです。
-確かにさらにダメージを与えてしまいそうですね。
サロンの中では私たちがブローやスタイリングもするので、まとまったヘアスタイルになったんですが、家に帰ってから同じように全然作れないというご連絡を頂いたんです。それがその方だけじゃなく、数名の方からご連絡を頂きました。
スタイリストになったことで舞い上がってしまい、アシスタントのときに学んだことを忘れてしまっていたんです。小松からも『ちゃんとお客様に向き合って、その人のことを思って出来ないなら「出来ない」としっかり伝えてあげなさい』と注意をうけました。
その人に似合うヘアスタイルを作るために
STYLE INFOスタイル情報
外国人風ショートヘア
【CHIIさんからのコメント】
外国人風ショートヘアもエアウェーブで柔らかいパーマをかけるとスタイリングもラクチンです♪
-失敗を経てからCHIIさんが提案するスタイルに変化はありましたか?
お客様とより向き合って接客をするようになりました。 しっかりとお客様の声を聞いて、髪の毛などの状態をプロの視点で判断し、それらすべてを踏まえて提案をするということを追求するようになったんです。
デビューしたての頃は、お客様から「こうなりたい」と見せられた写真を、その人に似合うかなど度外視で言われた通りに作っていましたが、その人に似合わせるということを重視するようにしました。
-確かにその人の希望がその人に似合うかは別ですもんね。CHIIさんは雑誌などでもヘアスタイルを提案することが多いと思いますが、サロンワークでのスタイル作りと違いはありますか?
雑誌でもサロンワークでも違いはなく、その人に似合うヘアスタイルを作れるかを第一に考えています。 確かにフェミニンやカジュアル、モードなどのテイストや、時代などのトレンドなどはありますが、それよりも大切なのはその人がどういうバックボーンがあるのかだと思っています。分かりやすくいうと、その人は主婦なのか働いているのか、それとも学生なのかにもよって提案するヘアスタイルは変わってきます。
-似合わせという部分が確かな土台になっているんですね。
私はいわゆる青文字系のスタイルの方が向いていて、フェミニンやモテなどの赤文字系は苦手だと思っていたんです。 だけどある雑誌でモデルさんのヘアメイクをしたときに、そのモデルさんがとてもステキな方で、その人に似合うヘアスタイルを作って提案しみたらより魅力的にすることができて、テイストとかトレンドじゃなく、その人の魅力をより引き出すことが大切なんだなって改めて気付きました。
-その人に似合うヘアスタイルを作るコツはあるのでしょうか?
お客様がご来店した際にまずその人のことを見て、「この人は今日どんな気分でメイクをしているんだろう」「この洋服を着たり、アクセサリーを選んだ理由はなんだろう」って言う見た目の部分から、どんな風になりたいのかを瞬時に見極めることを心掛けています。そして鏡の前に移動をして、長さのイメージを決めたり細かな調整をお客様と一緒にするようにします。
この時に大切なのが、お客様と鏡越しで目と目を合わせて会話することなんです。そうすることで、その人の気持ちも分かりますし、目に合わせでデザインを作ることができるんです。
趣味はソーイングや陶芸。なんでも手作り?
-CHIIさんはお休みの日などは何をされているんですか?
何かを作っていることがとても多いです。 料理を作ったり、洋服や陶芸もしています。実は今着ている洋服も自分の手作りなんですよ。
-すごいですね!
この洋服は、ヘアショーのステージ衣装で黒の洋服が必要だったんで作ったんです。色ムラがある風合いの洋服なんですが、実はこれ白い生地を私が自分で染めたんです。本当はもっと真っ黒になるはずだったんですが、イメージ通りにならなくてその時はショックでしたね。(笑)
この洋服以外にも、インスタにアップされている作品の衣装は自分で作っているんです。洋服作りが趣味になってからまだ2年くらいなんですが、徐々に作れるものが増えてきたこともあって今では珍しい布地の洋服しか買うことがなくなっちゃいました。(笑)
-陶芸をやるようになったきっかけはあるんですか?
私は何かを作っているのがとてもすきみたいで、義父が区の陶芸教室で講師をしていることもあり、お休みの日はその陶芸教室に通っています。周りは60〜70代の方が多いんですが、その先輩方から色々と教えてもらっています。 その中でも「この人は美容師やってても上手だったんだろうな」という方もいて話を聞いてみると本当に髪の毛を切ったことがある人だったんですよね。
-通じるものがあるのでしょうか?
立体的なものをどう形作るか、という点で同じ要素があると思います。 ひとつのものを完成させるためには、闇雲にやっても上手に行かずに、それを作るための展開図みたいなものが必要になります。カットだけではなく何かを作るときには、そういう細かな下準備が必要なんだなと知ることができました。
何かを室内で黙々と作る趣味ばかりですが、意外とアクティブなところもあって、私も主人も古道具が好きで地方でも面白いお店があるとわかると車で行ったりします。
インタビューを終えて
私の中でANTIのCHIIさんは、クリエイティブな感性がすごい美容師という印象だったのですが、お客様に似合うことを第一に考えていて良い意味で印象が覆されました。 自分に似合うヘアスタイルが分からないという方は、一度相談してみると今までの自分以上に魅力的にしてくれるかもしれません。 ファッションや陶芸など、何かモノ作りをすることが好きな方ともお話があって楽しい時間を過ごせそうですよね。
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